【猫アトピー症候群の定義・診断・治療 2021】 Pert 2

Pert.1で紹介した、猫のアレルギー性疾患の再定義をきっかけに、

「猫アトピー皮膚症候群(FASS)」の臨床徴候と診断ガイドラインまで新たに示されました!

 

FASS の診断は一貫した臨床症状に基づいており、FASS の診断の前に、ノミ/ノミアレルギー、他の寄生虫、感染症、および食物アレルギーなどの似た臨床的特徴を持つを疾患を除外する必要があります。

この機会に、診断の流れをぜひ抑えておきましょう!

 

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【猫アトピー症候群の定義・診断・治療 2021】

Pert 2
猫アトピー皮膚症候群の診断ガイドライン
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Clinical signs and diagnosis of feline atopic syndrome: detailed guidelines for a correct diagnosis

 

① まず、新たに定義された猫アトピー症候群(FAS)の分類とそれぞれの臨床徴候を確認しましょう

 

☝️ 猫アトピー皮膚症候群(FASS)は、4つの臨床徴候が重要ですね!

  • 粟粒生皮膚炎
  • 外傷性脱毛
  • 頭頸部掻破痕
  • 好酸球性肉芽腫

 

【猫アトピー症候群に関連する臨床徴候を示すアルゴリズム】

(本論文、表1から一部改変)

 

 

② 4つの臨床徴候の特徴と有病率も見ていきましょう!

 

☝️ ポイント

◎ 粟粒生皮膚炎(MD)

いくつかの小さな (通常は 1 ~ 2 mm) 丘疹として現れ、通常は外皮に囲まれる

◎ 外傷性脱毛(SIAH)

そう痒症の猫が毛皮を繰り返しなめたり、噛んだり、引っ張ったりして、毛を取り除いてできる

◎ 頭頸部掻破痕(FHNP)

顔、頭、首の掻痒によってできます。患者はその領域で必死に引っ掻いてしまい、皮膚痛、びらん、潰瘍、時には角膜潰瘍、眼瞼炎も観察される

◎ 好酸球性肉芽腫(EGC)

口腔肉芽腫、無痛性潰瘍、直線状に真皮が肥厚する線状肉芽腫、隆起した潰瘍部が見られる好酸球性プラークが特徴

 

以下の表は、263例中に見られた4つの臨床徴候の割合です。

外相性脱毛が最も多くなっています。

 

【選択された参考文献で報告されたネコのアトピー性皮膚症候群 (FASS) のさまざまな臨床症状の有病率】

(本論文、表2から一部改変)

 

 

③ FASS の診断において除外すべき鑑別疾患

 

☝️ ポイント

◎ FASSの臨床症状にはとてもばらつきがあり、またFASS以外の皮膚病でも似た臨床徴候を伴うことがあるので、多くの鑑別疾患を考慮する必要がある

◎ ノミアレルギー性皮膚炎との鑑別は最も重要で、ノミの存在や特異的IgE検査などで鑑別できる

◎ 細菌やマラセチアの感染もアレルギーの猫によく併発し、これらの鑑別または重複を判断しなければいけない

以下に、FASSの4つの臨床徴候ごとの鑑別疾患をまとめます。

 

【猫のアトピー性皮膚症候群の主な鑑別診断】

MD

SIAH

FHNP

EGC

ノミ

ノミ

ノミ

ノミ

ノミアレルギー性皮膚炎

ノミアレルギー性皮膚炎

ノミアレルギー性皮膚炎

ノミアレルギー性皮膚炎

食物アレルギー

食物アレルギー

食物アレルギー

食物アレルギー

皮膚糸状菌症

ニキビダニ

ニキビダニ

抗酸菌症

細菌性毛包炎

皮膚糸状菌症

その他の外部寄生虫

ノカルジア症

ツメダニ属

マラセチア皮膚炎

皮膚糸状菌症

真菌性疾患(胞子虫症)

その他の外部寄生虫

心因性脱毛症

表在性および深部の細菌感染

ウイルス性疾患

落葉状天疱瘡

猫下部尿路疾患

マラセチア皮膚炎

皮膚腫瘍(皮膚リンパ腫、肥満細胞腫瘍、扁平上皮がん)

薬疹

ウイルス性疾患(ヘルペス、パピローマ、カリシ、ポック、猫白血病ウイルス)

深部細菌感染

皮膚腫瘍(皮膚リンパ腫、肥満細胞腫瘍、扁平上皮がん)

無菌性肉芽腫性皮膚疾患(黄色腫症など)

点眼薬に対する副作用

薬物反応 (: メチマゾール)

落葉状天疱瘡

原発性副甲状腺機能低下症

(本論文、表4から一部改変)

 

 

④ FASS の診断

 

☝️ ポイント

◎ 現在FASS の診断基準は確立されてないが、「非ノミ誘発性過敏性皮膚炎(NFHD)の診断基準」を利用できる。

NFHDであれば、FASSまたは食物アレルギーと診断されるためである。

 

以下にNFHDの診断基準をまとめます。

(ノミアレルギーを除外できているかで2パターンあります)

 

【猫のアトピー性皮膚症候群の診断に至る臨床診断基準】

NFHD の診断基準

ノミアレルギーが除外された場合の NFHD の診断基準

少なくとも 2 つの身体部位が影響を受ける

開始時のそう痒の存在

4つの臨床パターンのうち少なくとも2つの存在:

  • 対称性脱毛症
  • 炎症性皮膚炎
  • 好酸球性皮膚炎
  • 頭頸部のびらん/潰瘍

以下の古典的な臨床反応パターンのうち少なくとも 2 つが存在する:

  • 対称性脱毛症
  • 炎症性皮膚炎
  • 好酸球性皮膚炎
  • 頭頸部びらん・潰瘍形成

対称性脱毛症の存在

影響を受ける少なくとも 2 つのサイトの存在

唇の病変の存在

優勢なパターンとしての細菌性皮膚炎の存在

あごまたは首のびらんまたは潰瘍の存在

頭、顔、唇、耳または首に好酸球性皮膚炎または対称性脱毛症またはびらん/潰瘍の存在

ランプの病変の欠如

ランプ、尾部または後肢の非対称性脱毛症の存在

ランプまたは尾部の非対称性脱毛症の欠如

腹部の対称性脱毛症の存在

結節または腫瘍の欠如

前肢のびらん/潰瘍の欠如

胸骨または a ax窩の病変の欠如

結節または腫瘍の欠如

8 つの基準のうち 5 つを満たすことで、NFHD の診断において 75% の感度と 76% の特異性が得られます。

これらの 10 の基準のうち 6 つを満たすことで、NFHD の診断において感度 90% および特異度 83% が得られます。

 

☝️ アレルゲン検査の意義について

◎ アレルゲン検査は診断法ではないが、どのアレルゲンが疾患を引き起こしているかを示すために使用される

◎ アレルゲン特異的 IgE 検査が一般的に利用され、皮内試験は猫へのストレスや技術的な難しさから実施率は少ない

◎ 特定のアレルゲンの関与が強く疑われるなら、アレルゲン特異的免疫療法 (ASIT) が治療の選択肢に上がる