シリーズの最後に「治療法と効果のエビデンス」を紹介します!
今回は、猫アトピー皮膚症候群の治療に焦点を当てて紹介しますが、論文内にはその他の猫アトピー症候群(猫喘息)への効果もあります。
とても有用な内容なので、時間がある方はぜひ文献にも目を通して見てください。
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【猫アトピー症候群の定義・診断・治療 2021】
Pert 3
猫アトピー皮膚症候群(FASS)の治療効果のエビデンス
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Treatment of the feline atopic syndrome – a systematic review
① アレルゲン特異的免疫療法(ASIT)
◎ 210 匹のFASS症例に対し、45~75%で有効性が報告された
◎ この有効性は犬の場合と同程度で、猫に対しても有効な治療法と言える
② 全身性グルココルチコイド
◎ グルココルチコイドの全身投与は、FASS を持つほとんどの猫で迅速かつ効果的
◎ 治療に反応した猫は、7~14日以内に反応
◎ メチルプレドニゾロン 1.4 ~ 1.5 mg/kg を 1 日 1 回投与し、36 匹中 33 匹の猫が寛解
◎ 寛解した後は、寛解を維持できる低用量(開始時の20 ~ 25%ほど)まで漸減できる
◎ 長期治療の場合、血液学・血清生化学・尿検査など定期的なモニタリングが必要
③ 局所性グルココルチコイド
◎ 0.0584%ヒドロコルチゾンアセポネート局所使用により、10匹中7 匹の猫で急速に有効な効果
◎ 可能な場合はいつでも FASS の局所治療を検討することを推奨
◎ 全身使用よりも副作用が少ない可能性があるが、長期治療にはモニタリングが同様に推奨される
④ シクロスポリン
◎ 1 日 1 回 7 mg/kg のシクロスポリンは、FASSの治療に有効
◎ 半数以上で、シクロスポリンを毎日から週2回の投与に減らすことができた
◎ 50匹中12匹で消化器症状の副作用が見られた
⑤ オクラシチニブ
◎ 1日1〜2回、約 1 mg/kg のオクラシチニブは、FASSの治療に有効
◎ まだ短期間の研究報告しかないため、投与症例にはモニタリングが必要
⑥ H1受容体遮断 抗ヒスタミン薬
◎ 一部のFASS症例に限定的な効果しかなく、良好〜エクセレントの治療反応は得られない可能性
◎ 早期および/または軽度の疾患で効果的で、ストレス緩和に寄与する可能性
⑦ 必須脂肪酸
◎ 粟粒生皮膚炎に対して中程度の有効性がある可能性
◎ B 細胞および T 細胞の機能を抑制する可能性
【FASSに対する治療のまとめ】
治療法 |
QOE(エビデンスの質) |
推奨度 |
コメント |
アレルゲン回避 |
FASSでは証拠が不十分 |
||
アレルゲン免疫療法 |
2 |
B |
FASSの有効性の限定的な証拠 |
全身性グルココルチコイド |
1 |
A |
FASでの良好な有効性の十分な証拠 |
局所グルココルチコイド |
2 |
B |
FASS での有効性の限定的な証拠 |
シクロスポリン |
1 |
A |
FASS での有効性の十分な証拠 |
オクラシチニブ |
1 |
A |
FASS での有効性の限定的な証拠 |
経口 H1受容体遮断 抗ヒスタミン薬 |
2 |
B |
FASS における低~中等度の有効性に関する限定的な証拠 |
必須脂肪酸 |
2 |
B |
FASS(炎症性皮膚炎)における中等度の有効性に関する限定的なエビデンス |
PEAum |
2 |
B |
FASS における中等度の有効性に関する限定的なエビデンス |
マロピタント |
2 |
B |
FASS での有効性の限定的な証拠 |
抗生物質 |
2 |
B |
感染が確認された場合のFASS での有効性の限定的なエビデンス |
幹細胞治療 |
FASSにおける不十分な証拠 |
(本論文、表10から一部改変)
※ QOE(エビデンスの質)
1:良質、患者志向
2:限られた品質、患者志向
3:その他の証拠(通常の実践、意見、または疾患指向の証拠)
※ 推薦度
A:一貫した質の高い患者志向のエビデンスに基づく
B:一貫性のない、または限られた質の患者志向のエビデンスに基づく
C:コンセンサス、通常の実践、意見、疾患指向のエビデンスまたはケースシリーズに基づく