犬の皮膚病でもっとも多い『膿皮症』

膿皮症とは?

膿皮症とは、一言で言えば「細菌による皮膚の感染症」です。

感染症を引き起こす微生物には、細菌・ウイルス・真菌(カビ)などがあり『膿皮症』も感染症の一つになります。

 

細菌・ウイルス・真菌(カビ)の違いについて

感染症を引き起こす主な病原微生物は、ウイルス、細菌、真菌(カビ)です。

ウイルスも細菌も真菌も非常に小さい微生物ですが、細菌や真菌は一般的な顕微鏡で見ることができるのに対し、ウイルスは特殊な顕微鏡でなければ見えません。

■ウイルス・細菌・真菌の大きさのイメージ図

ウイルス:0.5μm未満 細菌:0.5~10μm未満 真菌:3~40μm未満

また、細菌や真菌は自分で分裂して増えていくことができますが、ウイルスはヒトや動物など(宿主)の細胞に入り込まなければ増殖できないのが特徴です。

サワイ健康推進課

 

膿皮症の原因

 

膿皮症が起こる原因は、「ブドウ球菌」と呼ばれる細菌です。

ブドウ球菌は健康な犬の皮膚にも存在するのですが、皮膚のバリア機能や免疫力が低下した時に、皮膚の表面や毛穴の中でブドウ球菌が増殖して皮膚炎を起こしてしまいます。それが膿皮症です。

 

 

膿皮症の症状〜治療法まで

膿皮症の症状は?

  • 最近皮膚が赤くなって痒そう
  • 急に白いニキビや赤いプツプツができた
  • かさぶたができてきた など

 

初期症状では、赤い小さなブツブツがみられかゆみが見られます。ヒトの”にきび”のように、膿がたまった膿疱(のうほう)も現れます。かゆみによりはげしく掻いたり舐めたりして、毛が抜けてしまうこともあります。

 

膿皮症の症状のステージ

①毛穴の中でブドウ球菌が少しずつ増加します

膿疱(のうほう):”にきび”の様に膿が溜まった状態のこと

毛包炎:毛穴の炎症のこと

 

②”にきび”が弾けて、徐々に周囲に広がっていきます

 

③治らず長引くと、毛穴の黒ずみが数ヶ月残ることもあります

 

どうやって診断するの?

  • 皮膚症状や顕微鏡で見える菌を確認します
  • 細菌検査で菌の種類と効果的な薬を調べます
  • 血液検査、その他のホルモン検査

 

細菌検査を行うと感染している菌によく効く抗生物質を調べられます。

「お薬を飲み続けているのに良くならない」という時は、その薬が菌に効いていない場合があります。
無駄にお薬を飲み続ける前に、こういった検査をしっかり行うことをオススメしています。

 

ワンポイント  『細菌検査ってなに?』

細菌検査とは、感染した菌に効果的な抗生物質を調べる検査です。

菌の種類によって普段処方される抗生物質が効かないことあるので、お薬を飲んでも治りが悪い時はこの細菌検査が重要になるのです。

 

また「病院に通ってるのになかなか治らない」という時は、免疫力を低下させる疾患(基礎疾患)が隠れていることもあります。
基礎疾患が疑われる場合は、血液検査ホルモン検査で体の中の異常がないかくまなく調べます。

 

膿皮症の治療法は?

  • 消毒薬
  • 薬用シャンプー
  • 抗生物質の内服薬、外用剤

膿皮症の治療は、皮膚病の範囲や、お薬が飲めるか、定期的にシャンプーできるか、によって様々な選択肢があります。ヒトの風邪と同じように、抗生物質の内服も有効です。

 

チェック! 抗生物質を飲ませる時は、以下の症状の有無をチェックしましょう

  • 嘔吐
  • 血便、下痢、軟便
  • 食欲や元気がなくなる

抗生物質を飲むと、このような症状が起きてしまうことがまれにあります。
お薬との相性によりますので、違和感を感じた時はすぐ病院へご連絡ください。

獣医師と、他のお薬に切り替える相談も可能です。

 

 

治りにくい膿皮症が増えている…?

上記の方法で治療しても、膿皮症が治らないことがあります。その原因は、

  • 薬の効かない耐性菌が感染している
  • 皮膚免疫力が低下している

何度も抗生物質を使っていると、抗生物質で倒せない菌が生まれてしまいます。これを『耐性菌』といいます。『耐性菌』は、肺炎・尿路感染など、様々な疾患で治療を難航させるため、注意が必要です。

また、アトピー性皮膚炎アレルギー性皮膚炎など、皮膚免疫を低下させる下地がある場合は再発を繰り返すこともあります。膿皮症の管理には、『免疫力の低下を和らげる』、『薬の効かない耐性菌に要注意』がとても大切です。